皆さん、強傾斜、登っていますか?
明確な定義はないのですが、120度以上の傾斜がある壁を強傾斜と呼ぶことが多いです。
ジムにいる上級者や、テレビの中のプロ選手がめちゃくちゃ角度のついた壁を登っていて「カッコいい!」と思った方も多いのではないでしょうか。
この記事では、筆者の思う強傾斜の魅力と上達方法を、初心者の方向けに解説していきます!
強傾斜の魅力
まずは、垂壁やスラブでは味わえない、強傾斜ならではの魅力をお伝えしていきます!
圧倒的「壁を登ってる感」
強傾斜では、傾斜の緩い壁と比較して、パワーが求められます。
身体にかかる負荷は大きいですが、その分「自分は今壁を登っているんだ!」感が強いです。
自分の力一つで壁を踏破していくチャレンジ精神と達成感が、強傾斜ならではの魅力だと感じています。
「始めたばかりでまだ体力がないから強傾斜は難しそう…」
そう考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかしジムによっては強傾斜でも低いグレードの課題が用意されていることがあります。
初心者の方でも、積極的に強傾斜を登って、憧れのクライマーに一歩ずつ近づいていきましょう!
パワーが鍛えられる
強傾斜壁では、全身の筋肉を総動員させて登る必要があります。
腕だけではなく、足や体幹など、使えるものはすべて使っていくことになります。
そのため、強傾斜を登ることで全身のパワーが鍛えられることでしょう。
強傾斜で身につけたパワーは腐ることがありません。
他の傾斜でも大いに役立つので、クライミング全体がより楽しめるようになると思います。
色々なムーブ(技術)が身につく
強傾斜はパワーが大事ですが、それと同じくらいにムーブが重要です。
筋力1つで強傾斜課題の負荷に耐えるのは無理があるので、その負荷を逃がすためのムーブが必要になってくるからです。
具体的にはヒールフック、トーフック、キョン、などの足技から、俵持ちやピンチなどのホールドの持ち方まで、様々なテクニックが存在します。
このようなボルダリング特有のムーブやテクニックを駆使して登っていくところも、前述の「登っている感」に繋がっていきます。
強傾斜の上達方法
ここからは初心者向け強傾斜の上達方法を解説していきます!
足で掻き込む意識
強傾斜では、ただホールドに足を乗せるだけではなく、足を使って掻き込むことが重要です。
そのためのコツをお伝えしていきます。
つま先で乗る
スラブ編でもお伝えしている内容です。
初心者の方は足の裏全体でホールドに乗ることが多いですが、つま先立ちでピンポイントに乗ることを意識しましょう。
足の裏全体で乗ってしまうと、逆に力が入りづらいですし、体勢を変えるのがかなり難しくなります。
この写真をごらんください。
これは筆者が実際に使っているシューズを裏から見たものです。(アンパラレルのTNPRO LV)
筆者は普段、だいたいこの4点を使い分けてホールドに乗っています。
- シューズの先端部分(親指と人差し指の間あたり)
- 拇指球と親指の腹の間
- 拇指球の真下あたり
- 足の中指と薬指の間あたり
- 中指の付け根あたり
ただし、スラブや垂壁と違って、強傾斜ではだいたい①シューズの先端と、②拇指球と親指の腹の間しか使いません(あくまで筆者は)
もし、足の裏全体でしか乗れていなかったり、どこか一箇所でしか乗れていない方は、いろんな点で乗ってみることを試してみてください。
踏む方向を意識する
スラブや垂壁では、体重を乗せる方向について特に意識しなくてもよかったかもしれませんが、強傾斜ではそうは行きません。
ホールドの面に向かってベタ置きで体重を乗せたり、つま先を引っ掛けるようにして重力方向へ体重を乗せて掻き込んだりと、状況によって変えていく必要があります。
↓こちらがベタ置き
↓こちらが掻き込み
強傾斜では、基本的につま先を引っ掛けるような置き方をして、ホールドを掻き込むように登ることをおすすめします。
ホールドがのっぺりしていて掻き込めないときだけ、ベタ置きをしましょう。
体重を乗せる方向を意識するのが難しい方は、ホールドに対してカカトを上げる(掻き込み)or下げる(ベタ置き)を意識するとわかりやすいかもしれません。
腰を壁に近づける
手を出すときに、腰を壁に近づけることで
- 足に体重が乗るので腕が楽になる
- より遠くのホールドまで手が届く
- ムーブが安定する
こういったメリットがあります。
腰を壁に近づける際の具体的な身体の使い方をお伝えします。
身体をねじる(側体)
壁に対して身体の側面を向けるように身体をねじって登ることを側体と言います。
ねじればねじるほど腰が壁に近づき、楽にホールドを取ることができます。
筆者のようにパワーのないクライマーが得意なことが多いです。
ガニ股で掻き込む(正対)
壁に対して身体の正面を向けて登ることを正対と言います。
正対の際は、ガニ股のような体勢になることで腰が壁に近づき、楽にホールドを取ることができます。
パワーや柔軟性のあるクライマーが得意なことが多いです。
股関節の柔軟性が必要
側体にしろ正対にしろ、股関節の柔軟性が必要です。
側体の際は内股気味に脚をねじりこむ柔軟性
正対の際はガニ股気味に脚を開く柔軟性
どちらか一方が足りないと、強傾斜の課題は難易度がかなり高く感じられると思います。
筆者は生まれつき内股気味なので正対がとても苦手です。
しかし、根気強く、脚を開くストレッチや正対ムーブを繰り返していたらだいぶマシになりました。
骨格のクセは簡単には変わりませんので、長い目で見てじっくり確実に苦手な動きを潰していきましょう。
指は5本すべて使う
ホールドを保持する際は、できるだけ多くの指を使ったほうが楽になります。
指一本しか使わずに登るより、すべての指を使ったほうが力が指にかかる負荷が分散しますよね。
当たり前といえば当たり前ですが、初心者ほど親指や小指を使わずに登りがちです。
5本の指すべてを使った際のパワーが100%とすると、親指と小指なしで登ると単純計算で60%のパワーしか出せません。
5本の指すべてを使えるようになると、指の力を100%使えるだけでなく、体幹の筋肉を連動させやすくなる、指をケガしづらくなる等メリットがとても多いです。
ただし小指や親指は、最初は意識しないとなかなかうまく使えるようになりません。
まずはガバホールドだけでもいいので、使える場面ではすべての指を使うよう意識してみましょう。
とにかく登る
そんなこと?と思うかもしれませんが、正直これが一番大事です。
強傾斜は身体にかかる負荷が大きいため、最初のうちは、1日に登れる回数はそんなに多くないと思います。
しかし、強傾斜上達のためには強傾斜を登ることが一番の近道です。
筆者はあまりパワーがないクライマーなので、元々強傾斜に対してとても苦手意識がありました。
このままじゃダメだと思い立って、ある日ジムの店長に
「強傾斜に強くなりたいんですけどどうすればいいですか」
と質問したところ
「いや、そもそも強傾斜全然登ってないですよね、まずはたくさん登りましょう」
と言われました。
「たしかに!」と思ってその日からは強傾斜ばかり登るようになりました。
単純ですね(笑)
しかし、強傾斜を登っているうちに、強傾斜には強傾斜特有のコツと身体の使い方があることに気づけました。
自分は生まれつきパワーがないから、強傾斜が苦手なんだと決めつけていましたが、実際はテクニックのほうが足りていないことに気づけました。
そういった経験値を積んでいくためにも、強傾斜にたくさん挑戦することがとても重要だと思います。
まとめ
強傾斜はパワーだけで登ると思われがちですが、実際はコツやテクニックがとても重要で、奥深いです。
繊細かつパワフルな登りは、見ている人を魅了します。
たくさん登って、そんな「強いクライマー」を一緒に目指しましょう!